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式の展開や因数分解を利用するコツ

式の展開や因数分解を自在に使いこなせるようにし、解答のコツを身につけるのがこのページの目的です。
数学の問題を解いていく中で、これらを上手く利用していくと解答の幅が一気に広がります。
また展開や因数分解に気づければ、計算を大幅に短縮できることもよくあります。

式変形に不明点がある場合は、こちらのページも参考にしながら学習してください。

展開や因数分解を式の値へ応用する

展開や因数分解の初歩的な応用問題です。展開や因数分解をしなくても答えは出せますが、した方が良いです。
なぜか?
実際に問題を解いてみれば実感できます。

基本例題1
$x=17$のとき、$(x+5)(x-2)+(x+3)(x+1)$の値を求めよ。

考え方
$x=-17$を直接$(x+5)(x-2)+(x+3)(x+1)$に代入して計算しても答えは出せます。
ただそれでは4か所に代入してさらに計算を進めるため、計算ミスの危険が高まります。
先に$(x+5)(x-2)+(x+3)(x+1)$を展開し、式をコンパクトにまとめてから代入するのがコツ。それにより計算が格段にラクになります。

解答
$\begin{align}&(x+5)(x-2)-(x+3)(x+1)\\\\=&(x^2+3x-10)-(x^2+4x+3)\\\\=&x^2+3x-10-x^2-4x-3\\\\=&-x-13\\\\=&-(-17-13)=30\end{align}$

←かっこの外の$-$で区切って、それぞれでかっこを外す。

基本例題2
$x=76$のとき、$x^2+22x-48$の値を求めよ。

考え方
$x=76$を直接$x^2+22x-48$に代入すると数値が大きくなりすぎてウンザリしてきます。
計算ミスする危険Max!!
ただ、$x^2+22x-48$は因数分解できそうです。やってみましょう。

解答
$\begin{align}&x^2+22x-48\\\\=&(x+24)(x-2)\\\\=&(76+24)(76-2)\\\\=&100\times74=7400\end{align}$

←足して$+22$、かけて$-48$となる2つの数を見つける

解説
数値が大きいので因数分解も少々時間がかかるかもしれません。
でも因数分解できればかなりラクな計算になることもわかると思います。

これらの例題のように、展開や因数分解を施すことで計算が格段にラクになることは、数学の問題ではよくあります。
あまりに長い計算や、2乗すると3桁や4桁の数が出てきてウンザリする時は、展開や因数分解できるのでは?と一瞬考えてみるのがコツです。

展開や因数分解を整数の説明問題へ応用する

整数を文字式で示す際に、展開や因数分解を使います。特に説明する問題では、因数分解に気づけないと解答が進まなくなってしまいます。
解答に行き詰ったときは因数分解できないかを考えるのがコツです。

基本例題3
連続する2つの整数の2乗の差は、その2数の和に等しいことを説明せよ。

考え方
①連続する2つの整数を文字で表す
②それぞれの2乗を求め、その差を式で表す
③2数の和を式で表す
④それぞれの式が等しい形になっていることを示し結論を述べる
の流れで説明します。

2つの整数のうち小さい方を$n$とすると、連続する2つの整数は$n,n+1$ と表せます。
「連続する整数」を文字で表す場合、同じ文字を使います。

整数の説明問題を解くにあたって、前提となる知識を紹介したこちらページも合わせて確認してください。こちらは理屈を中心に解説しています。

解答
連続する2つの整数のうち小さい方を$n$とすると
連続する2つの整数は
$n$、$n+1$とおける

それらを2乗すると
$n^2$、$n^2+2n+1$

←$(n+1)^2=n^2+2n+1$

よってその差は
$(n^2+2n+1)-n^2=2n+1\quad①$
また2数の和は
$n+(n+1)=2n+1\quad②$

①②より連続する2つの整数の2乗の差は、その2数の和に等しくなる

解説
これとほぼ同様の説明問題は中2の段階で既に学んでいます。ただ乗法公式を使った計算が出てくるので中3の扱いになっています。
「連続する整数」は同じ文字を使って表すのが基本です。
逆に連続するという条件がない場合は異なる文字で表します。
基本例題3の場合、異なる文字で整数を表すと等しい式を示せなくなり、説明が詰まってしまいます。

展開や因数分解を図形問題へ応用する

図形への応用としては、面積や周の長さなどの式を示すために、展開や因数分解を使うことがあります。
問題文の通りに式を表して変形させていけば、大抵の問題は解答できます。

基本例題4


図のように半径$r$mの円形の土地の周囲に、幅$a$mの道を作った。
この道の面積を$S$m$^2$、道の中央を通る円周の長さを$l$mとするとき、$S=al$となることを説明せよ。

考え方
①面積に関する問題なのでまずは道の面積$S$を表す
②道の真ん中を通る円周の長さ$l$が条件にあるので$l$を式で表す
③2つの式から$S=al$を作り出す
この流れで説明します。
$S=al$への手がかりがないので、とにかく問題文の条件通りに式をつくり計算します。
その過程で展開や因数分解を使います。
$r$と$a$の位置関係に注意。

解答
円形の土地の面積は
$\pi r^2 ①$

円形の土地と道の面積を合わせた面積は
$\begin{align}&\pi(r+a)^2\\=&\pi(r^2+2ar+a^2)\\=&\pi r^2+2\pi ar+\pi a^2 ②\end{align}$

これより道の面積$S$は
$\begin{align}&S=(\pi r^2+2\pi ar+\pi a^2)-\pi r^2\\=&2\pi ar+\pi a^2 ③\end{align}$

←いきなり道の面積は求められない。
土地と道の面積の合計から土地の面積を引いて、道の面積を出す。

道の真ん中を通る円周の長さ$l$は
$\begin{align}l=&2\pi(r+\dfrac{1}{2}a)\\=&2\pi r+\pi a ④\end{align}$

ここで$al$を表すと④より
$\begin{align}al=&a(2\pi r+\pi a)\\=&2\pi a r+\pi a^2 ⑤\end{align}$

したがって③と⑤が等しいことから
$S=al$となる

解説
この問題のポイントは2つの式を組み合わせて式$S=al$を作り出す所にあります。
$S=al$を作り出す。

この式を作り出すということに疑問を持った人もいると思います。
『図形があるからこそそれに合わせて面積の式をつくれるはずだ!! でも式を強引に図形に合わせているじゃないか。これで本当に面積を表せているのか!!』と。

そうなんです。
2つの式を組み合わせてあれやこれやいじくっているから、確かに元々の図形的な意味からは離れてしまっています。
でもここが数学のスゴイところであって、この問題のコツになるところ。
計算上成り立てば確かに図形としての面積もその計算結果と一致するのです。

なので、「2つの式を組み合わせた時点で、計算上言える面積を確かめているんだ」と解釈してください。