中3で学ぶ式の展開とは、簡単に言ってしまえば(かっこ)を外す計算のこと。
中1の段階で既に学んでいる分配法則もかっこを外す計算でしたが、式の展開はその発展版と思ってください。
小学校までは数と数のかけ算を学び、中学生になってからは数と式のかけ算を学びました。
そして中3からは新しい計算方法として、式と式のかけ算を学びます。
式の展開とは
式と式のかけ算。「単項式$\times$多項式」や「多項式$\times$多項式」の計算を学びます。
具体的には$-ab\times(3a-b)$や$(x+1)(x+5)$の形をした計算式のかけ算を学びます。
多項式は必ず(かっこ)をつけて表すようにします。もし$(x+1)(x+5)$をかっこをつけずに$x+1x+5$と書いてしまうと全く意味が変わってしまいます。
この多項式のかっこを外し、単項式の和の形にしたものが式の展開、というわけです。
なお、$(x+1)\times(x+5)$と書いても間違いではありませんが、通常は$\times$を省略します。
ではどのようにしてかっこをはずすのか?
実際の計算を見ていきましょう。計算方法なので、とにかく計算のしかたをそのまま覚えてしまってください。
単項式×多項式の計算
単項式×2項の多項式
超基本例題1
$-ab(3a-b)$を展開せよ。
計算方法
単項式と多項式の計算ですが、似た問題を中1、中2の段階で学んでいます。
違いといえば文字が2種類あるのと2次の項が出てくるところでしょうか。
かっこの外にある$-ab$を、かっこの中にあるそれぞれの項にかけていきます。
$\begin{align}&-ab(3a-b)\\\\=&-ab\times3a-ab\times(-b)\\\\=&-3a^2b+ab^2\end{align}$

注意!!
$-3a^2b+ab^2$というように、$a^2b$の項と$ab^2$の項が出てきました。
同じ文字がそれぞれの項にあるからさらに計算できそうですが、この2つは全く違う意味の項です。
それぞれの文字の次数も一致しているものが同類項となります。
なのでこれ以上まとめることはできません。
もし$-3a^2b+a^2b$となっていれば$a$が2乗かつ$b$が1乗となっているので同類項となり、まとめて$-2a^2b$となります。
ぶっちゃけた話、中1の知識でも十分解ける計算です。
かっこの中の項全てにかけ算を施すので、符号も含めてかけ算をします。
ここはついうっかりしやすいところなので注意しましょう。
類題を解いて超基本をしっかりおさえておきましょう。
類題1
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad xy(x+y)\\&(2)\quad -4x(2xy+3xy^2)\\&(3)\quad 5ab(-2a-3ab)\\&(4)\quad -2ab(-3ab-b)\end{align}$
解答はこのページの最下部にあります。
単項式×3項の多項式
超基本例題2
$2x(3x-y+4)$を展開せよ。
計算方法
展開の仕方は超基本例題1と同じです。かっこの中の項それぞれにかけ算を施します。
$\begin{align}&2x(3x-y+4)\\\\=&2x\times3x+2x\times(-y)+2x\times(+4)\\\\=&6x^2-2xy+8x\end{align}$

かっこの中の多項式の項がいくつあろうと、展開のしかたは同じです。
もしかっこの中に項が5個あれば5回かけ算をします。10個あれば10回かけ算します。
もし1000個あれば・・・、さすがにやってられません。
類題2
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad xy(x+y+2)\\&(2)\quad -4x(2xy+3xy^2-x)\\&(3)\quad 5ab(-2a-3ab-b)\\&(4)\quad -2ab(-3ab-b+4)\end{align}$
解答はこのページの最下部にあります。
多項式$\div$単項式
超基本例題3
$(6m^2-8mn)\div{2m}$を展開せよ。
計算方法
計算に慣れるまで、文字を含む割り算はかけ算に直してから計算しましょう。
かけ算に直したらあとは上記例題と同様です。
$\begin{align}&(6m^2-8mn)\div{2m}\\\\=&(6m^2-8mn)\div\dfrac{2m}{1}\\\\=&(6m^2-8mn)\times\dfrac{1}{2m}\\\\=&6m^2\times\dfrac{1}{2m}-8mn\times\dfrac{1}{2m}\\\\=&3m-4n\end{align}$

超基本例題3については基本中の基本を確認する意味であえてかけ算に直しました。
慣れてきたら割り算のまま計算しても良いですが、計算に不安がある場合は1つ1つていねいに進めましょう。
なお$m$で約分できるのでそこは忘れずに。
類題3
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad(6x^2y-9xy)\div(-3y)\\&(2)\quad(-10x^2y+12xy^2)\div(-2xy)\end{align}$
解答はこのページの最下部にあります。
四則の混じった計算
超基本例題4
$x(2x+3y)-2y(4x-5y)$を展開せよ。
計算方法
長い式ですが計算方法自体は既に学んでいるやり方と同じです。
かっこの外にある$+$や$-$の前で区切り、区切ったそれぞれでかっこを外します。
同類項をまとめるのを忘れずに。
$\begin{align}&x(2x+3y)-2y(4x-5y)\\\\=&x\times2x+x\times3y-2y\times4x-2y\times(-5y)\\\\=&2x^2+3xy-8xy+10y^2\\\\=&2x^2-5xy+10y^2\end{align}$

長い計算になりますが、1つ1つていねいに進めれば決して難しいものではありません。
というより、高校入試ではこの計算ができるのが前提で出題されます。超必須事項です。(高校数学ではこのような計算ばかりです)
ならば練習するしかないですよね?
類題を用意しました。
類題4
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad2x(3x-y)+3y(x+y)\\&(2)\quad2x(3x-y)-3y(x+y)\end{align}$
解答はこのページの最下部にあります。
ここまで単項式×多項式の計算方法を解説しましたが、特に新しい計算方法ではないことは理解したと思います。
次に多項式×多項式の計算に移ります。
多項式×多項式の計算
ここからが本題、中3で新しく学ぶ「多項式×多項式」の計算方法です。
長い計算になりますが計算のしかたなので、そういうものだと割り切って覚えてください。
2項の多項式×2項の多項式
基本例題1
$(2x+1)(3x+4)$を展開せよ。
計算方法
左の多項式の項を右の多項式の項それぞれにかけます。
同類項があればまとめます。
$\begin{align}&(2x+1)(3x+4)\\\\=&2x\times 3x+2x\times(+4)+1\times3x+1\times(+4)\\\\=&6x^2+8x+3x+4\\\\=&6x^2+11x+4\end{align}$

このタイプの計算は面倒ですが1つ1つ順に計算していくしかありません。
一瞬にして答えを出す方法や横着する方法も残念ながらありません。
計算に慣れるまでは途中式もしっかり書いて進めるようにしましょう。
では慣れるためにはどうするか?
類題を解くしかないと思います。
類題5
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad(x+2)(3x+4)\\&(2)\quad(2x-1)(3x+4)\\&(3)\quad(3x+2)(2x-1)\\&(4)\quad(-2x-5)(x-3)\end{align}$
解答はこのページの最下部にあります。
3項以上ある多項式のかけ算
基本例題2
$(x+2)(x+y+1)$を展開せよ。
計算方法
項がいくつあろうが同様です。左の多項式の各項を右の多項式の各項にかけていきます。
同類項があればまとめます。
$\begin{align}&(x+2)(x+y+1)\\\\=&x\times x+x\times(+y)+x\times(+1)+2\times x+2\times(+ y)+2\times(+1)\\\\=&x^2+xy+x+2x+2y+2\\\\=&x^2+3x+xy+2y+2\end{align}$

基本例題では2項×3項の計算ですが、3項×2項の多項式のかけ算でもやり方は同じです。左の多項式の各項を右の多項式の各項にかけていきます。
もし3項×3項の計算なら、やはり同様に左の多項式の各項を右の多項式の各項にかけます。
項が多くなればその分計算も長くなりますが、そこは我慢してやるしかありません。
類題6
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad(x-2)(x+3y-1)\\&(2)\quad(x+2y-1)(x+4)\end{align}$
解答はこのページの最下部にあります。
このように多項式と多項式のかけ算は、1つ1つの項をかけていくのが原則です。
問題によっては解答が出るまでに、とても長い計算になることもあります。
途中計算が長いとどうしても自分の解答が間違っているのではないかと不安にもなりますが、多項式と多項式のかけ算はそんなものだと考えておいてください。
類題1 解答
$\begin{align}&(1)\quad x^2y+xy^2\\&(2)\quad-8x^2y-12x^2y^2\\&(3)\quad-10a^2b-15a^2b^2\\&(4)\quad6a^2b^2+2ab^2\end{align}$
類題2 解答
$\begin{align}&(1)\quad x^2y+xy^2+2xy\\&(2)\quad-8x^2y-12x^2y^2+4x^2\\&(3)\quad-10a^2b-15a^2b^2-5ab^2\\&(4)\quad6a^2b^2+2ab^2-8ab\end{align}$
類題3 解答
$\begin{align}&(1)\quad-2x^2+3x\\&(2)\quad5x-6y\end{align}$
類題4 解答
$\begin{align}(1)&\quad2x(3x-y)+3y(x+y)\\&=6x^2-2xy+3xy+3y^2\\&=6x^2+xy+3y^2\end{align}$
$\begin{align}(2)&\quad2x(3x-y)-3y(x+y)\\&=6x^2-2xy-3xy-3y^2\\&=6x^2-5xy-3y^2\end{align}$
類題5 解答
$\begin{align}(1)&\quad(x+2)(3x+4)\\&=3x^2+4x+6x+8\\&=3x^2+10x+8\end{align}$
$\begin{align}(2)&\quad(2x-1)(3x+4)\\&=6x^2+8x-3x-4\\&=6x^2+5x-4\end{align}$
$\begin{align}(3)&\quad(3x+2)(2x-1)\\&=6x^2-3x+4x-2\\&=6x^2+x-2\end{align}$
$\begin{align}(4)&\quad(-2x-5)(x-3)\\&=-2x^2+6x-5x+15\\&=-2x^2+x+15\end{align}$
類題6 解答
$\begin{align}(1)&\quad(x-2)(x+3y-1)\\&=x^2+3xy-x-2x-6y+2\\&=x^2+3xy-x+2\end{align}$
$\begin{align}(2)&\quad(x+2y-1)(x+4)\\&=x^2+4x+2xy+8y-x-4\\&=x^2+2xy+3x+8y-4\end{align}$