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乗法公式 足していくつか、かけていくつか

ここでは乗法公式を初めて学ぶ人や、乗法公式は学んだけど何をやっているのかがよくわからない人に対して解説します。
すでに乗法公式を理解している人は軽く確認して、このページの下段にある練習問題に進んで実力をつけましょう。

唐突ですが次の導入問題にチャレンジしてください。全8問です。全問解き終わるまでに、だいたいで良いから時間を計っておいてください。

導入問題1
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad(x+1)(x+3)&(2)\quad(x+2)(x+4)\\&(3)\quad(x+5)(x+1)&(4)\quad(x-1)(x-3)\\&(5)\quad(x-2)(x-4)&(6)\quad(x-5)(x-1)\\&(7)\quad(x+1)(x-3)&(8)\quad(x-2)(x+4)\end{align}$

式の展開とは多項式の積を単項式の和の形に表しかっこを外す操作のことです。
式の展開に不安のある人はこちらのページで復習!!

$(x+a)(x+b)$タイプの計算

乗法公式は覚えないで覚えること

繰り返しますがここは乗法公式を初めて学ぶ人のための解説です。

ここから先は冒頭の導入問題を必ず解いてから読み進めてください。

8問解くのに時間はどれ位かかりましたか?
3分位?それとも5分位?あるいはもっと??

導入問題にあるレベルの計算は、8問を20秒位で解ける計算力が入試では必須です。
8問を20秒。1問あたり2秒~3秒程度で解答。
一体どういうことなのか?

例えば冒頭の導入問題$(1)\quad(x+1)(x+3)$。
式の展開なので計算方法として

$\begin{align}&(x+1)(x+3)\\=& x\times x+x\times3+1\times x+1\times3\\=&x^2+4x+3\end{align}$

と進めたと思います。もちろんそれで立派な正解なのですが・・・。
以下導入問題1の解答です。途中の計算式は省略し問題と解答のみ掲載します。

導入問題1 解答
$\begin{align}&(1)\quad(x+1)(x+3)=x^2+4x+3\\&(2)\quad(x+2)(x+4)=x^2+6x+8\\&(3)\quad(x+5)(x+1)=x^2+6x+5\\&(4)\quad(x-1)(x-3)=x^2-4x+3\\&(5)\quad(x-2)(x-4)=x^2-6x+8\\&(6)\quad(x-5)(x-1)=x^2-6x+5\\&(7)\quad(x+1)(x-3)=x^2-2x-3\\&(8)\quad(x-2)(x+4)=x^2+2x-8\end{align}$

導入問題の解答。
よ~~く見てください。何か気づいたことはありませんか?
よ~~く見て気づかなかったら、ものすご~~くよく見てください。

気づかない人のためにヒント
展開前の数値の項と、展開後の$x$の係数と数値の項に注目。
何かに気づけたら次を読み進めてください。
気づいてない人はもうしばらく考えてください。

足していくつか、かけていくつか

気づけましたか?

$(1)\quad(x+1)(x+3)$でいうと、
展開前の数値の項の数を足したものに展開前の$1x$の項をかけたものが、展開後の$x$の項の係数

展開前の数値の項をかけたものが、展開後の数値の項になっています。

$1x$の$1$はもちろん係数のこと。そしてこの関係は(1)だけでなく他の問題でも同様の規則があります。
改めて導入問題解答を見て規則を確認してください。

導入問題1 解答
$\begin{align}&(1)\quad(x+1)(x+3)=x^2+4x+3\\&(2)\quad(x+2)(x+4)=x^2+6x+8\\&(3)\quad(x+5)(x+1)=x^2+6x+5\\&(4)\quad(x-1)(x-3)=x^2-4x+3\\&(5)\quad(x-2)(x-4)=x^2-6x+8\\&(6)\quad(x-5)(x-1)=x^2-6x+5\\&(7)\quad(x+1)(x-3)=x^2-2x-3\\&(8)\quad(x-2)(x+4)=x^2+2x-8\end{align}$

この規則を覚えていれば、以降同じような問題が出たときにいちいち途中計算を書かなくても瞬時に答えを出せます。
例えば$(x+3)(x+7)$とあったら瞬間的に$x^2+10x+21$と求められます。

教科書や参考書などには
$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$
と記載されています。
導入問題でやったことを文字式で説明したものがこれです。

いきなり
$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$
みたいなものを見せられたってとても覚える気になれません。
でも地道にコツコツ計算し規則が解れば、問題を見た瞬間に
「あっ、あ~すればいいんだ!!」
と半ば反射的に思えるはずです。

これは無理に覚えようとするのではなく、
足していくつか、
かけていくつか を考えて答えを出す

ということで、今後は$(x+a)(x+b)$の形の式を見たら、瞬間的に答えを出すようにしましょう。

とは言っても注意点もあります。それが次に説明することがら。

瞬時に答えを出せるのは$x$の項が完全一致している時だけ

注意!!

瞬間的に答えを出す方法が使えるのは
$(x+a)(x+b)$の$x$の項が完全一致している時だけです。

例えば
$(2x+3)(2x+4)$の場合は、$2x$の部分が一致しているので瞬間的に答えを出せます。
ただし$2x$に少し注意が必要です。

展開後の$x^2$の項は$2x$を2乗したもの

展開後の$x$の項は、展開前の数値だけの項を足したものに$2x$をかけたものとなっています。

もし$(2x+3)(2x+4)$のように$x$に係数がついて考えにくいと感じたら、$2x$をいったん$A$と置き換えてみましょう。
$(A+3)(A+4)$とし
$A^2+7A+12$としてから$A$を$2x$に戻すと
$4x^2+14x+12$と求められます。

置き換える方法で解くのも良いですが、なるべく早いうちに置き換えないでも解けるようにしておくのが望ましいです。

なお、
係数や文字など、少しでも違いがある場合は瞬時に答えを出すことはできません。

その場合は地道に式を展開して答えを出します。

$(x+a)^2$タイプ $(x-a)^2$タイプの計算

導入問題2
$(x+1)^2$ を展開せよ。

これも一瞬で答えを出す方法はあります。
ただ理屈を覚えてほしいので、ここはまず地道に式の展開をして答えを出してください。
2乗だから$(x+1)(x+1)$としたうえで瞬時に答えを出すと・・・

解答は$x^2+2x+1$です。引き続き導入問題2 類題を進めましょう。

導入問題2 類題
$\begin{align}&(1)\quad(x+2)^2\\&(2)\quad(x+3)^2\\&(3)\quad(x+4)^2\\&(4)\quad(x-2)^2\\&(5)\quad(x-3)^2\\&(6)\quad(x-4)^2\end{align}$

そこの君、いきなり解答を見ない。
最初は自分でしっかり考える!!

導入問題2 類題 解答
$\begin{align}&(1)\quad(x+2)^2=x^2+4x+4\\&(2)\quad(x+3)^2=x^2+6x+9\\&(3)\quad(x+4)^2=x^2+8x+16\\&(4)\quad(x-2)^2=x^2-4x+4\\&(5)\quad(x-3)^2=x^2-6x+9\\&(6)\quad(x-4)^2=x^2-8x+16\end{align}$

ここもまた問題と解答をよく見比べてください。2乗タイプの式の展開も規則性が見られますよね。
展開前の数値の項を2倍したものに、展開前の$1x$をかけたものが展開後の$x$の項の係数
展開前の数値の項を2乗したものが展開後の数値の項
 となっています。

この規則に従うと例えば
$(x+10)^2$も$x^2+20x+100$と瞬時に求められます。

教科書や参考書には
$\begin{align}&(x+a)^2=x^2+2ax+a^2\\&(x-a)^2=x^2-2ax+a^2\end{align}$
という式が掲載されていますが、上記を文字式で表したものがこの式です。
これも式を暗記するのではなく、形で判断し瞬時に求められるようにしてください。

$(x+a)(x-a)$タイプの計算

導入問題3
$(x+1)(x-1)$を展開せよ。

これも一瞬で答えを出せる方法はあります。ただまずは理屈を覚えてほしいので、地道に式の展開をして答えを出してください。

解答は$x^2-1$です。
引き続き類題を解いてみましょう。

導入問題3 類題
$\begin{align}&(1)\quad(x+2)(x-2)\\&(2)\quad(x+3)(x-3)\\&(3)\quad(x+10)(x-10)\end{align}$

ほらそこの君・・・、
何ですぐ答えを見ようとするかなぁ。

ちゃんと自力で答えを出してから解答を見ようぜ。

導入問題3 類題 解答
$\begin{align}&(1)\quad(x+2)(x-2)=x^2-4\\&(2)\quad(x+3)(x-3)=x^2-9\\&(3)\quad(x+10)(x-10)=x^2-100\end{align}$

これも規則を見つけてほしいのですが、これはすぐわかりますよね。
符号だけが違う形の多項式どうしのかけ算では2乗$-$2乗の形ができます。
これこそ瞬時に解答できるようにしましょう。

教科書や参考書には$(x+a)(x-a)=x^2-a^2$という式が記載されていますが、上記を文字式で表したものがこの式です。

乗法公式

乗法公式
$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$
$(x+a)^2=x^2+2ax+a^2$
$(x-a)^2=x^2-2ax+a^2$
$(x+a)(x-a)=x^2-a^2$

教科書や参考書などでは乗法公式として上記の式が紹介されています。
これは暗記するのではなく理屈をふまえた上で、瞬時に計算で求められるようにしてください。
$a$や$b$にいちいち数値を代入して考えていてはとても入試では時間が足りません。

ただ、展開前の$x$の項の係数が一致していない場合は瞬時に求めることができないので、その時は地道に計算して展開していきます。
それでは練習問題で実力をつけましょう。

練習問題1
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad(x+7)(x+2)&(2)&\quad(x+6)(x-4)\\&(3)\quad(x+8)^2&(4)&\quad(x-9)^2\\&(5)\quad(x+8)(x-8)\end{align}$

練習問題2
次の式を展開せよ。
$\begin{align}&(1)\quad(2x+3)(2x+1)&(2)&\quad(3x-1)(3x-2)\\&(3)\quad(3x+2)^2&(4)&\quad(4x+1)^2\\&(5)\quad(2x+3)(2x-3)&(6)&\quad(5x+2)(5x-2)\end{align}$

練習問題1 解答
$\begin{align}&(1)\quad x^2+9x+14&(2)&\quad x^2+2x-24\\&(3)\quad x^2+16x+64&(4)&\quad x^2-18x+81\\&(5)\quad x^2-64\end{align}$

練習問題2 解答
$\begin{align}&(1)\quad4x^2+8x+3&(2)&\quad9x^2-9x+2\\&(3)\quad9x^2+12x+4&(4)&\quad16x^2+8x+1\\&(5)\quad4x^2-9&(6)&\quad25x^2-4\end{align}$

補足
練習問題2も展開前の$x$の係数が一致しているので瞬時に答えを出せます。
ただ注意は必要です。
$(1)$なら展開前の数値の項の和に展開前の$2x$をかけて、展開後の$x$の項を求めています。

練習問題2のように、展開前の$x$の項に係数がある場合の展開も瞬時に求められるようにしておきたいですが、もしわからないようであればこれは無理をせず地道に展開して進めましょう。