ここでは根号を含む数の加法・減法から学び、前回までに扱った乗法・除法と合わせて、根号を含む数の乗法公式まで確認します。
根号の中の数値が同じものを足し算・引き算する
根号のある数の足し算・引き算は、根号の中の数値が同じものに注目し、次の2点にそって計算します。
$a\sqrt{b}\pm c\sqrt{b}=(a\pm c)\sqrt{b}\quad$(複合同順)
- 根号の外にある数値を足し算・引き算する
- 根号の中の数値はそのままにしておく
実際に計算を見て確認しましょう。
複合同順(ふくごうどうじゅん)
「$\pm$と出てきたとき、左の式で上の符号($+$)で考えたら右の式でも上の符号($+$)で考えて、左の式で下の符号($-$)で考えたら右の式でも下の符号($-$)で考えてね。」
という意味です。
中学ではあまり見ないことばですが、高校に入ってすぐに学ぶことばなのでついでに覚えておきましょう。
超基本例題1
次の計算をせよ。
$\begin{align}(1)&\:2\sqrt3+4\sqrt3\\(2)&\:\sqrt5+3\sqrt5\\(3)&\:4\sqrt2-5\sqrt2\end{align}$
解答
$(1)\:2\sqrt3+4\sqrt3=6\sqrt3$
$(2)\:\sqrt5+3\sqrt5=4\sqrt5$
$(3)\:4\sqrt2-5\sqrt2=-\sqrt2$
解説
計算の考え方自体は文字式の足し算・引き算と似ています。
根号部分を文字とみなすとまさに文字式の足し算・引き算と同じです。
重要なので繰り返しますが、根号の外にある数値を足し算・引き算し、根号の中の数値はそのままにします。
$\sqrt5$とあったら、$1\sqrt5$といった様に$1$が隠れています。要注意です。
引き続き超基本例題2に進みましょう。
超基本例題2
$3\sqrt2+2\sqrt5+2\sqrt2-4\sqrt5\quad$を計算せよ。
考え方
根号の中の数値が同じものどうしで足し算・引き算を進めます。
解答
$\begin{align}&\:3\sqrt2+2\sqrt5+2\sqrt2-4\sqrt5\\\\=&\:3\sqrt2+2\sqrt2+2\sqrt5-4\sqrt5\\\\=&(3+2)\sqrt2+(2-4)\sqrt5\\\\=&\:5\sqrt2-2\sqrt5\end{align}$
解説
根号の中の数値が違うと、それ以上足し算・引き算を進めることはできません。
これも文字式の計算と似ていますね。
ただ根号の中の数値が違うからといって足し算・引き算がそこで終了とも言い切れません。
どういうことか?
それが次の問題です。
基本例題1
次の計算をせよ。
$\begin{align}(1)&\:5\sqrt2+\sqrt8\\\\(2)&\:\dfrac{\sqrt{75}}{5}-\dfrac{\sqrt{48}}{4}\end{align}$
考え方
$(1)\quad$根号の中の数値が違うのでこれ以上計算できそうにありません。
でも$\sqrt8\quad$は$\quad2\sqrt2\quad$なので足し算できます。
このように、変形して根号の中の数値が一致するようならさらに計算を進めます。
$(2)\quad$分数の引き算なので通分しますが、・・・。こちらも根号部分が変形できないか確認します。
解答
$\begin{align}(1)&\:5\sqrt2+\sqrt8\\\\=&\:5\sqrt2+2\sqrt2\\\\=&\:7\sqrt2\end{align}$
$(2)\:75=25\times3$より$\sqrt{75}=5\sqrt3$
$\quad\,\,\:48=16\times3$より$\sqrt{48}=4\sqrt3$
これより
$\begin{align}&\dfrac{\sqrt{75}}{5}-\dfrac{\sqrt{48}}{4}\\\\=&\dfrac{5\sqrt{3}}{5}-\dfrac{4\sqrt{3}}{4}\\\\=&\sqrt3-\sqrt3\\\\=&0\end{align}$
補足
$(2)$の問題のように、根号の中が大きい数値のときは変形できないかを考えるように習慣づけましょう。
で、平方根の計算問題ではたいてい根号の中が同じ数値になるようになってます。
分数の引き算なので本来は通分して計算しますが、平方根を変形したら結果的に約分できたため分数の計算ではなくなりましたね。
分数のまま計算するか、あるいは根号部分を変形してから計算するか、どちらが計算しやすいかは問題により変わってきます。
問題を見てどのようにして解くか、都度考えるようにしましょう。

根号のついた数の足し算・引き算では
根号の中の数値が同じ値にならないかを常に考える
根号を含むいろいろな計算
根号のついた数でも今までに学んだ計算法則を使うことができます。
基本例題2
次の計算をせよ。
$\begin{align}&(1)\:\sqrt5(\sqrt5+3)&(2)&\:-\sqrt2(3+\sqrt2)\\&(3)\:\sqrt3(\sqrt{21}+\sqrt{12})&(4)&\:(\sqrt{12}-\sqrt6)\times\sqrt{18}\end{align}$
解答
$\begin{align}&(1)\:\sqrt5(\sqrt5+3)\\\\&=\:(\sqrt5)^2+3\sqrt5\\\\&=\:5+3\sqrt5\end{align}$
←$\sqrt5$を2乗するので
(かっこ)をつけて
$(\sqrt5)^2$となる
$\begin{align}&(2)\:-\sqrt2(3+\sqrt2)\\\\&=-3\sqrt2-(\sqrt2)^2\\\\&=-3\sqrt2-2\end{align}$
←$\sqrt2$を2乗するので
(かっこ)をつけて
$(\sqrt2)^2$となる
符号に注意
$\begin{align}&(3)\:\sqrt3(\sqrt{21}+\sqrt{12})\\\\&=\sqrt3\{(\sqrt3\times\sqrt7)+2\sqrt3\}\\\\&=\sqrt3\times\sqrt3\times\sqrt7+2\sqrt3\times\sqrt3\\\\&=3\sqrt7+2\times3\\\\&=3\sqrt7+6\end{align}$
←$\sqrt{21}=\sqrt3\times\sqrt7$で
$\sqrt3\times\sqrt7$がひとまとまり。
そのため(かっこ)をつけている。
$(3)\quad$別解
先に分配法則を施し、その後に根号の中を変形すると
$\begin{align}\quad&\sqrt3(\sqrt{21}+\sqrt{12})\\\\=&\:\sqrt{63}+\sqrt{36}\\\\=&\:3\sqrt7+6\end{align}$
$\begin{align}&(4)\:(\sqrt{12}-\sqrt6)\times\sqrt{18}\\\\&=(2\sqrt3-\sqrt6)\times3\sqrt2\\\\&=6\sqrt6-3\sqrt{12}\\\\&=6\sqrt6-3\times2\sqrt3\\\\&=6\sqrt6-6\sqrt3\end{align}$
基本例題3
次の計算をせよ。
$\begin{align}&(1)\:(\sqrt7+2)(\sqrt7+3)&(2)&\:(\sqrt5+8)(\sqrt5-6)\\&(3)\:(\sqrt5+3)^2&(4)&\:(\sqrt6+\sqrt2)(\sqrt6-\sqrt2)\end{align}$
考え方
根号のついた数を$x$としてみると乗法公式の基本計算と同じ形をしていることがわかると思います。
乗法公式の計算方法をそのまま当てはめましょう。
計算が格段に楽になります。
乗法公式を忘れている人はこちらのページ要チェック。
解答
$\begin{align}(1)&\:(\sqrt7+2)(\sqrt7+3)\\\\=&\:(\sqrt7)^2+5\sqrt7+6\\\\=&\:7+5\sqrt7+6\\\\=&13+5\sqrt7\end{align}$
←どうしても乗法公式とわかりにくいときは
$(x+2)(x+3)$
と置き換えてみる
解答は$5\sqrt7+13$でも可
$\begin{align}(2)&\:(\sqrt5+8)(\sqrt5-6)\\\\=&\:(\sqrt5)^2+2\sqrt5-48\\\\=&\:5+2\sqrt5-48\\\\=&-43+2\sqrt5\end{align}$
$\begin{align}(3)&\:(\sqrt5+3)^2\\\\=&\:(\sqrt5)^2+2\times\sqrt5\times3+3^2\\\\=&\:5+6\sqrt5+9\\\\=&\:14+6\sqrt5\end{align}$
$\begin{align}(4)&\:(\sqrt6+\sqrt2)(\sqrt6-\sqrt2)\\\\=&\:(\sqrt6)^2-(\sqrt2)^2\\\\=&\:6-2=4\end{align}$
←$(\sqrt2)^2$であることに注意!!
$(\sqrt{2^2})$では
結果は同じだが意味が全く異なり誤り。
補足
このページでは基本の確認のため計算の途中式も書きました。
ただ、慣れてきたら直接答えを出してもかまいません。
入試問題などでは計算スピードも求められます。
できれば基本例題3レベルの問題は、乗法公式を使って瞬間的に求められるようにしておくと良いでしょう。